【短編】クリス王子とセシル姫
目を閉じたままセシルが吐息を漏らす。

クリスはそんな彼女の体の両側に手をつくと、その顔を覗き込むようにして見た。

セシルはその視線から逃げるように顔を背けている。
エメラルドグリーンの瞳が潤んでいる。
上気した頬が、なんだかとても可愛らしかった。

「、、、大丈夫?」

「、、、ばか」

「ばか??」

意外な言葉に、クリスは目を丸くした。

「激しくしちゃダメって言われてるのに、、、」

「―――え??」

その言葉に、クリスは驚いて声をあげた。
”激しく”というか、まだ何もしてないのだけど。

セシルは困ったような顔のクリスをちらりと見ると、ぷっと吹き出した。

「嘘よ。
最高に、気持ちよかった、、、」

そう言って目を閉じるセシルに、クリスは困ったように「まだ終わってないけど」と言った。

セシルがまた吹き出す。

クスクス楽しそうに笑うセシルを、クリスは不思議そうにただしばらく見下ろしていた。


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