【短編】クリス王子とセシル姫

「仲が良くて、なによりだな」

式典に向かう前、アーサーが少し離れた所に立つセシルを見ながら、苦笑まじりに言った。

寝坊のことを言っているのだろうと思い、クリスは慌てて「別に、ちょっと疲れてたから、、、」と言い訳した。

「疲れてたわりには、まぁ激しいこと」

「は?」

「痕、付いてたぞ」

クリスは思わず目を丸くした。

よく見ると、セシルは今日も胸の開いたドレスを着ている。
どうやらそういう服しか持っていないらしい。

そして忘れていたが、その胸元には昨夜つけた痕が確かに残っているはずだった。

「、、、どこ見てんだよ」

赤くなりつつ文句を言うクリスに、アーサーはぷっと吹き出した。

「うっかり見るんじゃなかった。
すっかりあてられたよ。
ごちそうさま」

流石に何も言えない。

アーサーはそんなクリスに、「それから、おめでとうな」と付け加えた。

「、、、聞いたの?」

「医師を手配したの、俺だぜ」

「そっか、、、ありがとう」

「いえいえ」

アーサーはそう言うとちょっと笑った。


「変なヤキモチ妬く必要がどこにあるんだか」


クリスはまた何も言えず、俯くしかなかった。
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