【短編】クリス王子とセシル姫
颯爽と去っていく背中を見送りながら、クリスは顔をしかめた。

あの日以降、セシルはいつもと全く変わらなかった。
避けるでもなく、かといって会いたがるわけでもなく。

顔を合わせれば笑顔で話しかけてくる。

本当に全くいつもと変わらないのだ。

クリスが部屋に来ないのなんて、気にしてる風でもない。
むしろ1人でゆっくりできるのが嬉しいのかもしれない。

1人で意地を張っても、悲しいほど空回りだった。

クリスは沈んでいく気持ちをごまかすように、また足早に廊下を歩き始めた。
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