半熟cherry

……あんな話し方するんだ……。



私の知ってる郁は。

からかう口調か…からかう口調か…。

…からかう口調…。



…って、からかわれてばっかじゃん!!



……だから、なのかな。



“コイツ年上だけどアンタらより可愛いから”



普段と違う口調とセリフに。

不覚にもドキドキしてしまったんだ。





改札口を出る手前。

郁が立ち止まった。



『どしたの?』

「…ごめん」

『…なにが?』



ため息を吐きながら郁がつぶやいた。



「…イヤな思いさせた」



郁は私の頬にそっと触れた。



いつもの意志の強そうな瞳には影がさしている。



…いつもと違う郁に。

私も。

何て言っていいのかわからなくなった。



 

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