半熟cherry
うわッ。
涼真のバカ…。
郁には気付かれたくなかったのに…。
しかも。
「……茜……?」
郁が首を傾げる。
涼真、名前で呼んだし…。
この学校で私と涼真がイトコだと知ってるのは一美だけ。
名前なんかで呼んでたらおかしいでしょーが。
涼真のバカ。
「…なんで気配消してるの?“友藤センセー”」
フッと、唇の右端を持ち上げて。
郁が微笑んだ。
……あ、れ?
涼真が“茜”って呼んだコト。
気付いてない、のかな…?
「…センセーもサボり?」
『い、一緒にしないでクダサイッ!!』
「アハハッ」
私の後ろに立ってパソコンを覗き込んでる郁が笑う。
…なんだ。
フツーに笑えるんじゃない…。
あんな。
裏がありそうな、何考えてるのかわからない。
真っ黒い笑顔じゃなくて。
フツーに、笑えるんだ……。