恋愛小説

意地悪な告白

新しいアルバイト先は、私もよく知っていた。


私と聡子の住む部屋と、今までのアルバイト先の中間にある。


駐輪場がどこか分からなくて、お店の駐車場で自転車を押して
キョロキョロしていたら、突然クラクションが鳴った。


慌てて振り返ると、運転席で社長の奥さんが笑顔で手を振っている。


この明るさ…美人だからこそだろうなぁ…。


無邪気な奥さんの笑顔に、なんとなく励まされて、奥さんの指示通りに
自転車を停めて、奥さんと一緒に裏手から店に入った。


「ああ、紗恵ちゃん!」厨房には、海坊主みたいな頭の社長が居た。
「あ。社長!お久しぶりです!」懐かしい社長の声に、嬉しくなる。


私が聡子のアルバイト先のお客さんであるトモさんに紹介されて
今のアルバイト先に行った時に、面接を担当していたのがこの社長だ。


張りのある声と、笑いジワが、店長とすごく似ているな、と思っていて
店長と社長が親子だと聞いた時には、妙に嬉しくなったくらい、
優しくて働き者な人。もちろん、私は社長が大好きだった。


「今日から一緒に働くぞ!よろしくな!ガハハ!」
さっきまでの暗い気分なんて、吹き飛ぶくらいに、嬉しい話で、
社長の奥さんと社長に、感謝の気持ちで一杯になる。
「改めて、よろしくお願いします!」跳びはねそうになりながら
頭を下げて二人の顔を見ると、二人ともにこにこして私を見ている。
「うちの奥さんは厳しいけど、辞めるなよ!ガハハ!」


1番嬉しい誕生日プレゼントかもしれない。
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