俺様先生と秘密の授業【完全版】
 始まりは遅くても、手遅れと言うわけじゃない。

 兄貴と、岸君には、誠意を持って話し……

 あるいは、戦ってでも、愛莉を手に入れてみせるから、と直斗は言った。

「戦う、なんて。弱いのに?」

「ああ」

「岸君は、ともかく……兄貴には、殴られるかもしれないね?」

「多分な」



『例え、直斗でも愛莉に心を寄せるなら。追い詰めて、排除したら罪?』



 どう考えても、ただ殴っておしまい、とは考えられない兄貴の言葉。

 そんな言葉をふり払うように、あたしは、ぎゅっと直斗を抱きしめた。

「愛莉……?」

 あたしの。

 改めて湧いてきた不安を、半分だけ感じたらしい。

 心配そうな直斗の視線を受けずに、あたしは目をふせた。

「あたし……早くオトナにならないといけない、ね?」

 そうつぶやいたあたしに、直斗は首を振った。

「俺の想いは、告白しちまったけれど。
 愛莉とは、どんな間になったとしても変わらない。
 焦らなくていいぜ?
 どれだけ理性が、持つかヤバいけど。
 なるべく俺も短気を起こさずに待つつもりだから。
 それに、さっき、俺がオトナにしてやるって、言ったろう?」
 
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