丘の上より
「…っ!健史!」
丘の下から
女性の声が聞こえる。
彼の母親かもしれない…
「もう!どこに行ってたの?
こんな雨の中で…」
母親の声は怒りよりも
彼に会えた安堵の気持ちのほうが強く感じた。
私は
家族というものに初めて触れた。
あたたかい母…
自分にも
存在しただろうか。
「おねぇちゃんとね
お話していたの!」
「おねぇちゃん?
また…健史はこれ以上ママを
困らすの?」
その言葉を聞いて
男の子はこちらに
目を大きくしながら振り向く。