reverse【完】
「どうせやるなら、もっといい女捕まえなさいよ」


「それとも…私に捨てられてもいいくらいい女だったの?」


「違う!!本気じゃない!!!」


叫ぶように大きな声を出してしまった


美咲と作ったこの家庭を
壊さないように…



ただそれだけだったんだ



エミがどう美咲に言ったかは分からない
でも、あの記憶のない日以外に、エミと体を重ねることもしていない

俺にとっては…


「そうね…分かってる」


軽く息を吐き、そう言う美咲との温度差にまた泣きたくなった


「あいつだって、本気じゃない」


真剣に想いを伝えてくれたエミの想いを
【本気じゃない】と言っている俺は
つくづく自分が一番可愛い ヘタレ野郎だ



「本気だったらわざわざ出向いてあんなこと言わないもの」


え…



「ここに来たのか!?」


会社で調べて電話でもかけてきたのかと思っていた
まさか…家にまで

美咲に会いに来ていたなんて…


「来たよ。わざわざ平日にね…」


あの時だ

車で話した次の日…


美咲に会うために
エミは会社を休んだのか…




「なんだよそれ……」


あんなに真剣な顔で
好きだ。別れない。
と言っていながら、美咲に会うことを決めていたのか…


いつまでも気持ちが揺れないからか…?

振り回されている俺を嘲笑いたかったからか…?



分からない



だけど、エミの思惑なんて
どうでもよかった


目の前で顔を歪ませる
美咲が離れていこうとしている現実に



ただ頭を抱え込み、俯くことしかできなかった









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