幻妖涙歌


 何も知らない彼は、いつものように少女を待っていました。


 しかし――月が天高くに昇っても、少女は現れません。月が沈んでいき、夜明けが近づいても。


 心配になった彼は、初めて村へと近寄りました。少女が迷っているのなら分かるように、竪琴を鳴らしながら。


 その音色は、確かに少女に届きました。彼が近くにいる、そう悟り、痛む身体に鞭打ち音のする方向へと逃げました。


 村人達は少女に石を投じ続けました。足を引きずり逃げる少女を嘲笑うように、一定の距離を取り、まるで遊びであるかのように。


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