漆黒の少女。

………のは真実

俺は全てを無かったことにしたかった。
だが、そんなことは出来るはずがない。
忘れることが出来るならどんなに楽なんだろうか。
自分たちの利益のために犯した罪を隠せる訳なんてない。
自分に罪悪感がある限り。

「君は、俺が作り出した罪悪の幻想なんだ。あの時庭の倉庫の死角に居たのは『ただの人形』なんだ」

少女は少し後退りした。

「お兄ちゃんの幻想??人形って何??」

俺は真実に向き合わなくてはいけない。
息を深く吸い込む。

「あの時、不意に倉庫を見たんだ。すると黒くて長い髪がちらりと見えた。最初は人が隠れているのかと思って冷や汗をかいたよ。恐る恐る倉庫の方へと向かうとそこには一体の人形が椅子に座っていたんだ。黒くて長い髪、黒くて綺麗な瞳、君とそっくりな人形だ。いや、正確には君だ」

少女は悲しそうに俺を見つめている。
隣にいたキャリーの姿はもう消えてしまっている。

「君を作り出してしまったのは、恐らく印象に残ったからだと思う。おばあさんを殺してしまった罪悪感と印象に残った人形が現実逃避と重なって俺の中で生まれたんだと思う」

キャリーが居なくなったことに気づいた少女は泣いている。

「私も消えちゃうの??お兄ちゃんの側に居たらいけないの??」

そうなんだ、俺は自分の罪から逃げてはいけない。

「あぁ、俺はもう逃げてはいけないんだ。俺が犯した罪を忘れないように自ら作った幻想が君なんだ」

少女の身体が透けていく、少女が泣いている、それは俺が泣いていると言うことだ。
少女は俺が作り出した幻想、少女は俺自身だからだ。



< 34 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop