煌めきの瞬間



「安藤さん‥‥」


「‥‥何?」



「わたし‥‥穴にハマってしまいました‥‥」



「何? 聞こえない」




ぼそぼそと話すわたしの声は、安藤さんに聞こえなかった。


みるみる顔が赤く染まっていくわたしの前で、子猫が楽しそうに蝶を追いかけ始める。




もう‥‥言うしかないんだよね‥‥

言うしかない――!!



「お尻が穴にハマって動けません!!」




湯たんぽのように熱くなったわたしの顔の前に、

去っていく黒猫の親子の後ろ姿と、整った顔立ちの安藤さん――



「えっ!? ええっ――!!??」






< 55 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop