時雨の夜に
彼はオレンジの頭を困った風に、ちょっと掻いた。


「だから言っただろ。……あーあ、これじゃあデートも無理かな」

「無理じゃないです! 遊びに行きましょうよ」


有無を言わせず彼の袖を引っ張って、私は外に出ていく。






この日は、近くのお店を何軒も渡り歩いた。

まるで友人と買い物に耽(ふけ)っている時みたいに洋服を見たり、アクセサリーを選んだり、雑貨屋を覗いたりもした。


始めは私のワガママに振り回されていたかのようなシグレも、徐々に私が好むものを把握してくれて、楽しい会話が増えていく。


二人の好きなもの、嫌いなものは違ったけれど、それはそれなりに新鮮な気がした。


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