不思議病-フシギビョウ-は死に至る
「では、出発します。かけ声にあわせてオールを引いてくださいね」
オールを引く……ということは港のほうを見ながら後方に進むらしい。
「みなさん、声出してくださいね」
……わかっているさ。
「藤沢、行くぞ」
「僕もうダメ。イキそう」
吐くかどうかはともかくその表現はやめろ。
だが、突っ込もうと思っても頭の中でぐるぐる渦を巻いている感覚が邪魔をした。
これは、酔っているのか?
しかしそれほど気分も悪くない。
オレはまだ大丈夫だ。
「それじゃあみなさん。……1、2!」
「1、2!」
その『1、2』にあわせてオールを引く。
そして次の『1、2』までにオールを前に戻す。
それの繰り返し。
単調な作業だ。
「1、2!」
「1、2!」
それは繰り返される。
「1、2!」
「1、2!」
単純に。
……。
何も考えずにいた。
ただ、頭の中の渦巻きがどんどん大きくなっていった。
「……はい、休憩しましょう」
オールを引き上げ、立てる。
気がつくと波が大きくなっていた。
遠くには他の船が見える。
「みなさん、気分はどうですか?」
そう聞かれた。
そこで、頭の中のぐるぐるを確認する。
「っ……!」
喉の奥から何かがはい上がってきそう。
そうだ、藤沢は?
「ふじさ……」