不思議病-フシギビョウ-は死に至る
「いっそ雨でも降ってくれたらいいのになあ」
カナコが窓の向こうに半身乗り出しながら言った。
今は七月初め。
梅雨もどこへ行ったのか、からっと晴れ上がる毎日。
こうもなると逆に梅雨が恋しくなってしまう。
梅雨は梅雨で、傘をずっと差してなくちゃいけないのはメンドクサイが。
カナコのそれを見て、サヤが同じように窓から体を出す。
続いてキョウスケも。
……そんなに涼しいのだろうか。
オレも開いていた窓から体を出す。
ときたま吹く微風。
……ちょっと涼しいかもしれない。
そのまま下――中庭を眺めていた。
誰かが通る。
目線が合う。
……こっちみんな。
その誰かはすぐにどこかへ行ってしまった。
……あそこからなら、窓から四人がうなだれて見えただろう。
傍から見るとかなり奇怪な光景だ。
「オレたちって変かな……」
「変ですよ」
部屋の奥からリンの冷めた声が聞こえた。
「この部活はまともに活動しないのか」
エイヤ……この部活がかつて一度でもまともに活動したことがあっただろうか。
いや、ない。
しかしこのまま奇異の目で見られ続けるのもあれなので体を起こす。
……暑い。
一体この部活は何をすると言うのだろう。
文芸部らしい活動ねえ。
「……ふむ」
キョウスケが普段の調子に戻ったようだ。
「では文芸部らしく、時節に合わせ……短冊なんて書いてみないかね?」
七夕はもうすぐに迫ってきていた。