不思議病-フシギビョウ-は死に至る


「意味は……わかりますか?」

意味……は、ええと、憶えている。

「――時は常に移ろいゆくもの、だっけか」

「はい、よく出来ました」

そして、

「その言葉――諸行無常、憶えておいてくださいね」

諸行無常。

オレなりの解釈で開いてみると、諸々の行いは常では無い。

どんなものでもいずれは消えてなくなってしまう……世界の理だ。

それにどんな意味があるのかわからないが、

「きっと憶えておくよ」

大切なことなんだろう。





「さて、そろそろ行きましょうか」

リンが言った。

「もう行くのか?」

オレはもう少しここにいたかった。

「諸行無常、ですよ」

それでも。

「盛者必衰――いつかは衰えるんだから少しの盛りを楽しもうぜ」

「それもそうですけど、私が説教したんだから行きますよ」

何だよそれは。

「……人はずっと同じ場所にいられないのだから」

「?まあ……」

リンの横顔はどこか名残惜しそうだった。





行きはバスだったが、今はゆっくり歩いている。

後ろに流れる景色――というより物陰から新しい景色が現れている。

そしてそのどれもが初めてみるものばかりだった。

オレのインドア加減をなめるな。

……それにしても。

「道合っているのか?」

並んで歩くリンに尋ねる。

「……ナオキさんがわかって歩いていたんじゃないんですか?」

……。

「海はあっちの方角」

「焦りませんね」

「焦っても仕方がないからな」


< 244 / 248 >

この作品をシェア

pagetop