不思議病-フシギビョウ-は死に至る

三日目



キレイな朝だ。

オレは、自分の寝起きのいい日をそう例える。

この調子だと、バスの中で寝そうにない。

自分の体のペースは、自分がよく理解している。

「なーんでこんなに気持ちいいんだか」

オレは何かに期待している。
それは何かわかっていたが、意識せずにいた。

そんなしょうもない目的のため、自分が朝から準備しているのかと思えば、ちゃんちゃらおかしく思える。

「オレは変態か」

バス停でしばらくそんなことを考えていた。





いつもと同じ時刻に、バスが来た。

乗り込み、中を見渡す。



――いた。



タイヤで高くなった一人席。

そこに彼女は座り、本を眺めていた。



きっとこれが、日常になっているんだろう。
だからこそ、それに神々しさを感じる。

偶然から生まれた普通の光景にオレは酔っているのだ。



「おはよ」

オレが声をかけると、

「おはようございます」

リンは本から目をそらし、オレの方を見て答える。

そんな光景に安心するようになった。

そんな日常を嬉しく思うようになった。



高校に入学してから一ヶ月も経っていない。
オレはまだ、生活に慣れていなかったのだろう。

だが部活に入って三日目。
オレはきっと心から感じたのだろう。



これが、オレが心からこのままでいたい、と思える状況だと。


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