バンドマン



「――――!社会、ルール、そんなもんクソ喰らえだ!コノヤロウ、死んじまえ!」



汗と煙草のにおいが鼻をつく。


モッシュの中にいるため、視界は激しく揺れ動き、定まらない。


じんわりと汗ばんだ体で、それでも拳を高く突き上げて、誰もが衝動のままに暴れていた。


ふいに、最前列にいた赤髪の少年が、ステージとの境にある柵によじ登った。


そして振り返り、舌を突き出して中指を立てると、そのままフロア側へ勢いよくダイブ。


人々の頭上を流れていく赤色を目で追いながら、俺は何故か、全てから解放されたような気分になっていた。


今ならリスクや不安を全部置き去りにして、自分の衝動に素直になれると、理由もなく思ったからだ。


だからいくら頭が痛んでも、それはむしろ爽快ですらあった。


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