たべちゃいたいほど、恋してる。
自分の父親による母への愛情表現を見て育ったため(甘い台詞などは日常茶飯事)、多少そこらの男とは違うかもしれないと龍之介も考えてはいたが。
まさか自身がこんなふうになるとは想像すらしていなかった。
父を反面教師にしようと思っていたはずなのに。
現実は必要以上に彼女に甘く、独占欲は人一倍という父とあまり変わらない図。
(…あー…まじで。健に何て言おう…)
予想を遥かに超えた自分の状態に、彼女の保護者的存在でもある親友への報告という名の言い訳を考える龍之介。
当たり障りのない言葉を探しながら左手で優衣の髪を撫でていれば、少し落ち着きを取り戻したらしい優衣が身を小さくしながら龍之介を見上げていて。