たべちゃいたいほど、恋してる。




それはつまり。




「…………………お前、迷子なのか?」




龍之介の言葉にはっと体を強ばらせる優衣。




「はっ。そ、そうだった!!って違うよ!迷子じゃないよ!ただ音楽室に辿り着けないだけで!」


「……いやお前、それを迷子って言うんだ」




あぁ…天然なのかこいつ、と龍之介は納得したように心の中で頷いた。

恐らく優衣は気付いてないのだろう。さ自分で"大上くんも迷っちゃったの?"って聞いたよことに。



("も"ってことは、お前迷子なんだよな。………そりゃあ、辿り着けねぇだろ。だって…)




龍之介は困り果てている優衣から、窓の向こう側に見えるもう一つの校舎へと視線を移す。




「…音楽室、向こうの校舎だろ」




窓を指差しながらそう言えば、優衣は顔面蒼白になって固まった。


そして奇怪な声を上げて叫んだかと思えば、だんだんと目元に溜まっていく涙。




(…ころころ表情の変わる奴。面白いけど)




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