たべちゃいたいほど、恋してる。




(はぁ…愛しちゃってんなー、俺)




右手で頭の後ろを掻きながら深く溜息を吐く。


だが眉を寄せたその顔に嫌悪感など一切見えず、むしろ幸せそうに緩んでいて。




「明日の弁当…優衣の好きなもんでも入れっかな」




そう呟きながら小さな十字路を右に曲がった時


ドンッ


前から来た誰かの肩と龍之介の肩が強くぶつかった。




「っ」




思わぬ痛みにきゅっと表情を歪めた龍之介が顔を上げれば、見えたのは見覚えのある制服。そして何となく見たことがある気がする男の顔で。

龍之介以上に喧嘩を好んでいるような顔つきをした男。


しかし何処で見かけたのかはまったく思い出せない。




(…どっかで会ったような…誰だっけ、こいつ)




< 390 / 574 >

この作品をシェア

pagetop