たべちゃいたいほど、恋してる。
(はぁ…愛しちゃってんなー、俺)
右手で頭の後ろを掻きながら深く溜息を吐く。
だが眉を寄せたその顔に嫌悪感など一切見えず、むしろ幸せそうに緩んでいて。
「明日の弁当…優衣の好きなもんでも入れっかな」
そう呟きながら小さな十字路を右に曲がった時
ドンッ
前から来た誰かの肩と龍之介の肩が強くぶつかった。
「っ」
思わぬ痛みにきゅっと表情を歪めた龍之介が顔を上げれば、見えたのは見覚えのある制服。そして何となく見たことがある気がする男の顔で。
龍之介以上に喧嘩を好んでいるような顔つきをした男。
しかし何処で見かけたのかはまったく思い出せない。
(…どっかで会ったような…誰だっけ、こいつ)