たべちゃいたいほど、恋してる。
にこっと花が咲いたような笑顔。
しかしどこか困ったように眉を下げながらそう言うと、優衣は近くにあった自分の鞄を掴んで勢いよく教室を飛び出した。
後ろから誰かが自分の名前を呼ぶ声が聞こえたような気がしたが振り返ることは出来ない。
(……っ)
周りの音を全て遮断して全速力でがむしゃらに校内を走る。
辿り着いたのは、いつだったか龍之介が泣きながら文句を言っている優衣を見つけだした非常階段で。
「はぁ…はぁっ」
肩で息をしながらその場にぺたりと座り込む優衣。
その顔にやはり涙は見られない。
だが今にも泣きだしてしまうのではと思うほど、ただただ苦しそうに歪んでいた。