射しこむ光りはかわらない
ライブハウス『猫』の入口。
鼻歌混じりで見上げる『猫』の看板に一回シャッターをきる。
思いついて向かった先で気がついた。
この場所に必ず恭子がいるわけじゃない事に。

ライブハウスでの撮影が禁止されているなら、恭子を外に連れ出せばいい、そんな思いつきを邪魔する予定もなく、そのまま足はこのライブハウスへと向かっていた。

高ぶった気持ちがホッと胸を撫で下ろしていた。
思いついたはいいが向かいながらどんどんと緊張していく自分がいた。
彼女がいない事の残念な気持ちとの反面、緊張から解放されらくになる。
とりあえずで店の看板を写真に写した。
入口の脇にしゃがみこむ。
片側一車線の道路をはさんで向かい側にはビルが壁みたく建ち並ぶ。
忙しそうに行き交う人たち何気なくその景色にカメラを向けた。
ファインダーから覗く世界にも変わる事なく行き交う人々、 その中に見覚えのある顔が周りとワンテンポ遅れのスピードで歩いているのをみつける、周りの速度が普通ならば、そこだけ散歩しているみたいに進んでいた。

そこも一枚カメラに記憶してその行き先を目で追った。
道の真ん中をそのスピードで進むそれは障害物以外何でもなく、後ろから前から避けるように追い抜かれ、かわされていく。
みなの煙た気な表情を気にするそぶりもなく、イヤホンをしながら時々立ち止まり少し先の横断歩道まで進んでいった。
どうやらそれを渡りこちらに向かってくるようだった。
横断歩道を渡り徐々に近づいてくる、こちらも立ち上がり自分の存在をしめした。
こちらに気づく、軽く相手は驚いた後、イロに対して敵意をジンジン向けてきた。
そのまま無視して店の中に向かおうとする。

「すいません。」

イロは慌てて声をかけた。
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