*写真屋の恋*

「あぁ、ありがとうございます。ハンコですね。」


「そうそうハンコと後、柏井さんのアドレスもね♪」


「はいはい。それはまた今度。後荷物はもうちょっと優しく扱って下さいね。」


「女の子は厳重に優しく扱うよ~。」


「へ~~えぇ~。」


冷たい顔して棒読みで納得する。




この軽い作業着の男は、「ヤマナシ」さん。下の名前は知らない。うましか運送の人。

完璧な笑顔に黒い肌、甘いフェイス、ばっちり似合う作業着。

格好いいものや美しいものに弱い私は、初めの頃は結構ハシャいでいたけど、今や、その軽さと、荷物運びの雑さの方に目が行ってしまって、顔なんて最近きちんとみていない。



「もー可愛い顔して、言うことトゲあるよなぁー。」


「いえいえ、それに優しいのを疑ってるわけじゃないですよ。向かい隣のカフェ店員『リナちゃん』を一生かけて優しく大事にして下さいね。(ニッコリ)」

「げっ」


なんで知ってんだ、と、顔を青くしてそそくさ仕事に戻る「ヤマナシ」さん。

笑って見送りながら、また作業に戻る。



そんなもん、こんな田舎ですからネ。


ヤマナシさんの女性癖なんてそこらへんにだだ漏れて漂ってますよ。




なーんであんな人にときめいていたんだろうなぁ。と、小走りの後ろ姿をチラリと見つめる。





昔からそうなのだ。




私は美しいものに弱い。






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