逝く前に




俺の体は、家には向かわずに葬儀を行う所へと運ばれた。




家が狭いってのもあるけど、死に方が死に方だし……。




きっとそういうのも考えたんじゃないかなぁって思った。








「本日はお体のお清めと、旅立ちのお支度を整えさせて頂きます」








翌日、俺の体は葬儀場の人の手によって、洗われる事となった。




親父と母さんが俺の唇に水を含んだ脱脂綿をあてた。








『死水を取る……とかいうやつか?』








俺は自分がされる事に、いちいち驚いた。




体や頭をシャワーで流したり、髭をそったり。








『まるで、介護老人だよ……』








裸が見えないように、タオルを掛けた中で洗う……とはいえ、相手は若い人。




見てるのは両親。




さすがにそれ以上見てるのは恥ずかしくなり、かといって、部屋から逃げる事も出来ず、ただ後ろを向くしかなかった。










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