月と太陽の事件簿13/アルテミスの翼
「今のあたしがあるのは杉田さんのおかげだし、Pリーグを観にきてくれるファンのおかげ。だからあたし、フットサルをやめたくないんだ」

それにあたし今リーグの得点王なんだよ、と、翼さんは誇らしげな笑みを見せた。

その笑顔を見たあたしは確信した。

杉田さんの言うように、翼さんは誰かのためになると、ものすごく頑張れる人なんだ。

仕事を終えてから自主トレをするのだって、誰かのために努力することが大好きな人だからに違いない。

だからあたしはさっき、ランニングする翼さんの姿が素敵に思えたんだ。

こんな女(ひと)が、話題作りのために自作自演なんかするワケがない!

応援してくれるファンに背を向けて、芸能界を引退なんかするはずない!

するとあたしのすぐ横で鼻をすする音がした。

見るとそこには完全に涙目の湯月くん。

察するに、翼さんの想いに感動したに違いない。

…ほんのちょっと前まで自作自演を疑ってたくせに。

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