苦くて甘い恋愛中毒


「どうせ気づいてないだろうけど、菜穂は人気あるのよ? 美人だし、仕事はできるし。あんたが男いりませんオーラ出しまくりだから、言い寄られることが少ないだけで。」

“ま、あたしほどじゃないけど”

最後の一言は完全に余計だが、大抵の世間一般の女なら、そんなことを言われたら嬉しく感じるものなんだろう。
人との深い関わりが正直面倒くさくて、仕事上の付き合いはするものの、一定の距離感を保っていた私にとってそんなこと意外だったし、嬉しくないと言ったら嘘になる。

でも、私にとっては要が私が作った料理を食べて言ってくれる、「うまい」って言葉のほうが何倍も価値があるように思う。


何も言わなくても、私の考えていることが分かったんだろう。
心底呆れたような顔をして、こちらを見る。

この女、いっそ占い師にでもなればいいのに。
その洞察力で適当なこと言えば、一体いくら詐欺れるか計り知れない。

「分かった、あたしはもう何も言わない。ただね、もう少し他の人にも目向けてみてもいいと思うわよ? 男なんか、吐いて捨てるほど転がってるんだから!」


わかってる。
理恵の言ってることが正しいんだろうってこと。

彼氏がいたっていなくたって、遊ぶ人は遊ぶし、出会いに対して前向きな人は多い。
彼氏といえども、微妙すぎる関係の男に立てるほどの義理もない。

私だって今まで恋愛してきて、これほど悩んだり泣いたりしたことなんてなかったし、正直恋愛なんて人生の単なる副産物だと思っていた。


でも彼ほど好きになった人だっていなかった。
『この人じゃなきゃだめだ』『代わりなんかいない』って、そんなこと、私が思うようになるなんて。

恋愛って、つくづく恐ろしい。


「ま、その気になったらいつでも言って。理恵さまが極上の男用意してあげるから」

「……そのときは頼むわ」


いつになるか、分からないけど。


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