苦くて甘い恋愛中毒


iPhoneを手に取り、メッセージアプリを確認する。
この行為を帰ってきてからだけで、いったい何度繰り返しただろう。

思い出そうとしてやめた。
数えてみたところでその数が絶望的であることは分かっているし、そもそも数えきれない可能性だってある。

そんなことを考えている今この瞬間にも、また右手が同じ動作をするのに、一度たりとも、震えることはない。

いっそのこと、電源を切ってやろうかと思った。

〝でも、もし、連絡がきたら?〟

そんな浅はかな希望が捨てられない。
今日はどうか連絡が来ないでほしいと願ったのはほんの少し前なのに、たた数十分でこの様だ。


こんな愚痴を言いそうな自分にも本気で嫌気がさす。
今の状況になったことに、彼は全面的に非はないのだ。

思い出すのも躊躇われる、三年前。

頑なに〝女〟を拒もうとする彼に。

『私のこと、好きじゃなくたっていい』

そう言ったのは、誰だったか。
まぁ誰って、それはほかでもない、私自身なんだけど。


だから、別に要が私をどう思おうと、どんな扱いをしようと、そんなの要にとってはどうでもいいことだし。
都合のいい女だろうが、無料の家政婦だろうが、単なる性欲処理機だろうが、彼の立場からすれば、私が行ったことを実行しているだけのことだ。

そこに、私が不満を抱いたり愚痴ったりするなんて、お門違いもいいところで、なんともはた迷惑な話である。


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