苦くて甘い恋愛中毒


とりあえずここはどこで、昨晩あの後どうなったのか。
事情を知っている人がいるなら説明してほしい。

そう願ったものの、そんなに都合よく、事情を知っている人が現れるわけもなく。

もうこの際、さっさと出てってしまう方が得策かもしれない。
事情もなにも、酔いつぶれた以外に回答は得られないだろうから。


恐る恐る部屋を出ると、そこには変わらず静寂が広がっているだけだった

蓋が開きっぱなしのスーツケースから剥き出しの衣類が溢れ、ガラスのテーブルの上には何かの資料だと思われる紙類と、同じく溢れかえった煙草の吸い殻がそのまま放置されている。

仕事が忙しい男の典型とも言える部屋は、お世辞にも片付いているとは言えない。


この部屋を見てますます分からなくなった。

ここはいったいだれの家なのか?

少なくとも、酔った時に頼る社会人の知り合いなんてものは私にはいない。


『帰るときはポストに鍵入れといて。昨日のこと何も覚えてないだろうけど、なんかあったら連絡して』

ダイニングテーブルの上に私のバッグを発見すると、そこにはメモと一緒に無造作に鍵と名刺が置いてあった。


名前は〝仲山 要〟?



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