今宵の月は美しい【完】
☆今宵の月は美しい☆

※scene1『君は可愛くなくなくない』


確かに「帰りたくない」と言ったのは、私です。

同情を誘うような私の家庭の事情は、何度もの生活指導で既に嫌になるくらい彼の頭にはインプットされている。


『今日、うちにママの彼氏がきてるんだよ!
帰れないの! 行くとこないの!』

それが可哀想だと思ったの?

どっかでオヤジひっかけて援助交際する!! と言う捨て台詞に、それは聞き捨てならんと思った?


加えて彼には私を停学にしてしまったと言うつまらない負い目があり、それをずっと気にしてくれているのも知っている。



『泊めてあげるけど、誰にも言うなよ』

昨夜あなたは、そう言った。



「あなたは先生... 」

古文の中鉢先生。

私のような悪い子たちを嗜める生徒指導も、担任を持っていないあなたのお仕事。

当然でしょう、と言う顔で彼は頷いた。

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