今宵の月は美しい【完】
『頼子』と、声を掛けられて。

私は悲鳴を上げた。

「うちの学校の先生だって!」

そう説明する間もなく、スーツ姿の中鉢を警察か何かだと思い込んだ友達は、みんなあっという間に逃げてしまった。

『…友達甲斐のない奴らだね』

面目ない。

そんな浅い付き合いしかしていない、友人たちです。


タクシーに詰め込まれ、家に帰されそうになる所を慌てて泣き真似をして、無理やり中鉢の家に上がりこんだのだった。


嗚呼、思いだしてきた。

タクシーを降り、『あれだ』と指さされたその建物と呼ぶのもおこがましい建築物を目にして、私は『泊めて!』と言った事を後悔した。

何と言う、おんぼろアパート。

『お化けでそー... 』

と、言うか歩くと床抜けそう... 。

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