私だけの王子さま
これが、委員長の過去。
花梨さんの言っていた辛い過去だったのだ。
気が付いた時には、私の目からも、一筋の涙が流れ落ちていた。
でも、これだけは言える。
委員長は何も悪くない。
おばあさんの死はきっと、避けられないものだった。
だけど、今それを委員長に言ったとしても、ただの慰めにしかならない。
傷付いた心を、
ずっと抱え込んでいた真実を、
私にさらけ出してくれた委員長。
その委員長に、私が言ってあげられること。
それは―――
「委員長、話してくれて、ありがとう」
私は、それだけ言うと、隣にいた委員長の背中をそっとさすった。
委員長があの夜、私にしてくれたように。
すっかり暗くなった夜の街には、時々通る車の音だけが、寂しく響いていた…。