私だけの王子さま



“――あのさ、”「あのね、」


昨日見たテレビの話とか、今日はこの後雨が降りそうだとか、他愛のない会話を続けていると、珍しく二人の声が重なった。


「何?」

“いや、相原からどうぞ?”

「え……いいの?」

“ん。俺はあとでいい”


本当は、委員長の言葉の続きが気になって仕方がなかった。

でも、電話をかけたのは私だし、委員長も気を遣ってくれている。


それに、まだいちばん大切なことを伝えていない。


あたしは、勇気を出して再び口を開いた。



「あのね、あの時のお礼も兼ねて、また会えないかなって思って……」


“……”


急に黙り込む委員長。


やっぱり、急に会いたいなんて、唐突すぎたかな。


「あの……無理だったら別に」


そう言いかけた時。



“――雪也くーん!ちょっと来てー?”


受話器から、女の人の高い声が聞こえてきた。


一瞬で今日の映像がフラッシュバックする。


……まさか、
昼間一緒にいた――?



ズキンッ……







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