私だけの王子さま



委員長は、息を整えるために、何回か深呼吸をしてから、ベンチに座った。


そして、立ち上がっていた私を見て、自分の隣をポンポンと叩きながら言った。


「…少し、話そっか」


私は、てっきり、すぐに出発すると思っていたので、この言葉には拍子抜けだった。


「時間、大丈夫なの?」


そう聞きながらも、ちょこんと委員長の隣に座る。


「うん、大丈夫。すぐ近くだから」


「すぐ?」


こんな朝早くに待ち合わせだったから、遠出でもするのかと思っていた。


「ま、来れば分かるよ!

それより、最近どう?あれ以来、何かあったりしない?」


そう問いかけた委員長は、少し心配そうな表情をしている。


その時、ふと麻智の言った言葉が蘇ってきた。



‘委員長、前々から柚季のこと心配してたみたいだから’



―――聞いて…みようかな。


そう思って委員長を見た。


委員長は、きょとんとした顔をしている。



「あの…委員長…」


「ん?」


相変わらずの優しくて綺麗な瞳。


真っ直ぐに見つめていたら、吸い込まれてしまいそうだった。




「あ……ううん、何でもない!」


そう言って、咄嗟に目をそらす私。


意識した途端に、心臓がバクバクしはじめてしまい、結局何も聞くことができなかった。



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