教え子の甘い誘惑
アタシだけの問題児
授業開始の鐘の音が、校舎に鳴り響く。

アタシは教室の扉の前で、深呼吸をした。

―よしっ! 今日こそは来ていますように!

祈るような気持ちで、扉を開いた。

「おはよう、みんな。楽しい英語の授業を始めるわよ!」

明るく振る舞い、教壇に立った。

そして視線を彼の席へ向けて…がっくり項垂れた。

「せっ先生…」

「気にしない方が良いですよ」

「いつものことじゃないですか」

生徒達が気まずそうに、口々にアタシを慰める言葉を言ってくれる。

「…今日も、なのね」

あはは…と生徒達の間で渇いた笑いが広がる。

40人いるはずの席には、1つだけ空席がある。

彼の席だ。

今日も彼、世納(せのう)華月(かづき)くんは、アタシの英語の授業に出席してくれなかった。
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