Monsoon Town
「――桃井さ…」

東雲が呼んだと思ったら、
「好きな男でもできた?」

そんなことを言ってきた。

どこかで聞いた質問だと、那智は思った。

那智は苦笑いを顔に浮かべると、
「それ、彩花ちゃんも同じことを言ってました」
と、言い返した。

「ああ、そう。

桃井が急に化けた時、みんながそう言ってたから俺もそうなのかと思ってた」

「ば、化けたって…」

呆れて何も言えないと言うのは、こう言うことだと思った。

好きな人ならいる…けれど、その人には決められた婚約者がいる。

自分よりも、かわいくていい子だと思った。

「違うなら違うで別にいいけど、みんなが言ってたよ」

そう言った東雲に、
「えっ?」

那智は訳がわからなくて聞き返した。
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