Monsoon Town
「ああ、会長に呼ばれたんだ」

藤堂は自分の方に視線を向けてくれた陣内に返事をした

会長とは、陣内の祖父のことである。

「一体何の用で呼ばれたんだ?」

そう聞いてきた陣内に、
「さあな」

藤堂は答えるとジャケットを羽織った。

「用事があるなら、俺を呼べばいいのに…」

呟くように、陣内が言った。

「俺も何で陣内のじいさんに呼ばれたのかわからない。

秘書の俺よりも、孫の陣内を呼べばいいのにな」

身支度を済ませた藤堂はフッと笑った。

「んじゃ、行ってくる。

明日はいつも通りでいいんだよな?」

「ああ」

陣内が首を縦に振ってうなずいたことを確認すると、藤堂はリビングを後にした。
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