Monsoon Town
「ここは俺の家のリビングだ。

倒れていたお前を見つけて、俺の家に運んで、お前の看病をした」

そう説明をした陣内に、
「――そうだったんですか…」

納得したように、少女が言った。

「お前は、自分の名前がわからないと言ったな?」

そう言った陣内に、少女が首を縦に振ってうなずいた。

「名前をつけてやろう」

陣内が言った。

「――名前…?」

パチパチとまばたきをさせて、少女が首を傾げた。

「“お前”ばっかりじゃ、嫌だろ」

少女はジッと、陣内を見つめた。

陣内の唇が動いて、
「――お前の名前は、“ひまわり”だ」
と、音を発した。
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