恋して、チェリー
‐‐‐‐キミに会いに!
「……あ、イヤ」
非常階段の先に見えるドア。
どうやら“あの場所”に向かっているみたい。
抵抗して立ち止まるあたし。
「大丈夫だから」
柔らかい笑みを浮かべるアキ先輩が、なだめるようにあたしの頭を撫でた。
――ギィィ……ッ
その先に見える、懐かしい風景。
あの頃とは確かに違う、ちょっぴり冷たい風。
赤や黄色に色付き始めた木の葉たち。
「随分と悩んでいたみたいだよ」
「恭一くん、ですか……?」
見下ろす景色から視線を外さない先輩が静かに頷く。
「もうこれ以上、傷付く姿を見たくない」
――『大切にしたかった』
――傷付く……たを、……ない。
キ ズ ツ ク ス ガ タ ヲ ミ タ ク ナ イ 。
先輩の言葉が、あの時見たあやふやな夢をほどいていって。
聞き取れなかった、夢の中の言葉が、今ならハッキリと分かる。