恋して、チェリー


い、一緒に帰りませんか。

一緒に帰りませんか、と。



呆れ顔のまま、ため息をこぼす王子にせかされるままに。



“今から”言おうとする言葉を、噛まないよう、復唱する。



「用ないなら、帰るけど?」

さぞかし告白に慣れていらっしゃるでしょう王子は、カバンを肩へとかけ直した。





「あの……っ、好きです!」

「……」


…………。

………………。



あたしの恋が、終わりを告げた瞬間だった。






「何やってんの?」

「まさかのミス、だね」


もう、救いようがない程。


反論のはの字も出てこないあたしは深いため息をもらした。



「一緒に帰ろうと、好きです。なんで誘いの言葉と愛の告白を間違えるかね」

「気持ちが先走っちゃったんだよね」

ヨシヨシ、と頭を撫でてくれる比奈の手。





――『分かってると思うけど、間違っても告白はNGね?』

もう、ウンザリする程されてるから。

……勘弁してやって。




「あ、あたし……っ」

アキ先輩の忠告をことごとく外し……今頃、あたしの暴走っぷりを笑っているハズだ。


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