恋して、チェリー
「……だって、」
そこだけが、キラキラ輝いてるように見えて。
なぜかあたしは、その中に入って行くことが出来なかった。
「アイツはオレの……」
恭一くんの言葉で“真実”を聞く時が来た。
言われなくても、分かってた。
でも、今になっても“遠い親戚”なんて言葉を期待してるおバカなあたしがいて。
「彼女、だった」
――ズキン、……。
分かっていたはずなのに、やっぱり傷付くよ。
あの子は、あたしの知らない恭一くんを知ってる。
その声でどんな風に囁いて
その唇でどんなキスして
その指でどんな風に触れて
その腕でどれくらいの強さで
抱きしめたの――?
「……」
急に、目の前が白く染まった。
気が付けば、あたしは温かい胸の中にいたんだ。
それ以上、何も話してくれない無言の彼の背中に腕を回して。
ただひたすら、体温だけを感じていた。
これから、あの子によって嵐のような日が始まる。
勝負を目の前にして、あたしは少し怖じ気付いていた。