【完】甘いカラダ苦いココロ

 時計はもう午後六時半を指していた。早番は七時まで。

 商品を片付けたり、磨いたり、店の様子を見ながら遅番の子への引き継ぎの準備をする。

 店内を見回してると、なんとなく落ち着かない様子の女子高生が目に入った。
 白いシャツに赤と紺のストライプのネクタイ。その上にベージュのVネックのニットを着ている。スカートは赤と紺のタータンチェック。

 この辺りでは結構偏差値の高い進学校の制服だ。
 胸元まである茶色がかった髪が丁寧に巻かれている。肩からかけた革のバックの持ち手をぎゅっと握りしめていた。アクセサリーを選びにきた雰囲気ではなかったけど目が合って、声をかける。

「何かお探しですか?」

 近づくと、彼女は少し迷ってから口を開いた。

「『さや』さんって人、ここにいますか?」

 
< 43 / 231 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop