夏の夢・夏の香り・私のトナリ

私は、部屋に入ると溜め息を吐いた…。


真琴の顔が、頭の中で現れては消えていく…。

｢マコト……｣


あの短い間だったけど、真琴と出会った日のことが、鮮明に想い出される。

｢…やめて、もう会わないって決めたんだから…決心が鈍る｣

言葉とは裏腹、真琴の笑った顔が頭の中で、いっぱいになっていく。


｢…………っ！｣
溢れ出す涙が頬を伝う。

私は自分の手で頭を叩いた。
真琴の記憶を消したかったから…
思い出すのが辛いから。


それでも、真琴は消えてくれない…。


私は壁に近づくと、何度も何度も頭を叩きつけたが、それも無理だった…。


額には血が流れ、壁にはベットリと血がこびりつく。


｢………マコトを記憶から消すことは出来ないのね｣


ポロポロと涙を流し続けた…。
頭が痛いからではない。
それ以上に、もっともっとメルメルは胸がズキンズキンと痛んでいた。