中途半端なオトコマエ!
店長は最近あせりぎみだった。

100メートルも離れていない場所に、ライバルのコンビニ建設計画があると聞いたからだ。


「やばいぞ、やばい」

事務室で地図を広げながら、そうつぶやく姿を見たこともある。


「店長、『ホーソン』ができるんですって?」

「うん。そうらしいな」

「大丈夫ですよ」

「うーん。ぼくも北川君みたいな才能があればな」

本気なんだろうか?

「オレは、コンビニの正社員になろうかと思っていたところです」

「あ?例の話?」

「はい」

「うん、正社員になっちゃいなよ。まさか『ホーソン』の社員にはならないよね?」

「もちろんですよ」

店長は、今度、正社員の募集があれば、教えてくれると言った。


よし、これでよし。

オレは、夢を捨て、コンビニで生きるんだ!



「まあ、大変だけれどね。いつつぶれるか、わからないし」

店長が、ぼそりと言った。

なんだ、正社員だの店長だのって、案外「堅実」でも「確実」でも「安泰」でもないんだな。

この世じゃ、どう生きようと、不安がいっぱいってことか。


じゃ、自分の夢を追いかけた方がいいのか? 

たとえ、失敗しても。


おれは、また、不安にかられ始めた。

なんなんだ、オレ。

< 63 / 70 >

この作品をシェア

pagetop