第一歩


ゆっくりと歩く



いろいろな事を思い出しながら…



あの角を曲がった所だ…


約束の時間ちょうどだろう…






(ピンポンー)



「はい。」


『美雨です。』


「今、開けるわね」




ぱたぱたと駆け寄ってくる音が聞こえる。



ガラガラ…



「いらっしゃい さぁ、入って。」




客間へと通されると、そこには彼のお父さんが座って待っていた…。


「美雨ちゃん。よく来てくれたね」


『お久しぶりです。』


「さっ、座りなさい!」



ほどなくして、お茶を運んできたお母さんが座り、向き合う形となった。



「美雨ちゃん。今日は本当に来てくれてありがとう」

「…どうだい?元気にしてたかね?」


『はい。』


しばらく互いの近況を話した…。


五年ぶりに見るご両親は少し髪に白髪がまじり、以前よりやつれた様だった…。


『…お父さん、お母さん』


「…今でも、そう呼んでくれるなんて…」


お母さんが涙ぐむ… 


『許して貰えるなら…

お線香を…上げて…いいですか…』


「許すもなにも…

やっぱり今も自分を責め続けていたんだね…」







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