鼓動より速く
1.ガラクタ
朝。

誰も起きて居ない静寂と薄暗い朝。

ボクは布団の中で目を覚ます。起きて間もなく、無意識のまま手を心臓にそっと当てる。


トクン。 トクン。 トクン。


一定のリズムを刻む心音。
乱れる事も止まる事もない。規則的に音を奏で続ける。

ボクは、溜め息混じりの息を吐き、深呼吸をした。

布団の中は、自分の体温で温められた空気が充満している。
その空気は少し重く感じ、異物を混入したように肺が苦しくなった。


そして・・・・・・・便乗するように心臓が反応する。


トクン。トクン。トクン。


若干、速くなる心音を確認して、ボクは布団を蹴り上げた。

新鮮な空気が流れ込み、布団が落下して来る。

「ふぅ」

冷たい新鮮な空気を肺に入れると、心臓はまたいつものリズムを取り戻した。

「ヤレヤレ」

いつもながら、厄介なモノと感じた。
ボクはこの厄介モノを



『ガラクタ』



と呼んでいる。
愛着は感じないが、皮肉を込めて名付けた。


ボクは心臓をトンと軽く叩き、
起き上がった。


今日もまた、生きてる。
そう感じると・・・・・・・・・・・・・・・涙が流れた。
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