いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
………佐山君が、私たちを見ている。

……私たち?


視線をおろすと、久世玲人の腕が私の胸の前でがっちりとまわっている。

ゆっくりと後ろを振り返ろうとすると、その前に、久世玲人が私の頬にチュッとキスを落とした。


「久世っ!!!!」

すかさず佐山君の怒鳴り声が飛ぶが、久世玲人は何も返さずシカトしているようだ。


わなわなと怒りに震える佐山君が、睨みつけるような視線を送ってくる。




…………佐山君が、見ている。


………見ている。


……見て…。



ハッ!!とようやく頭が覚醒し、その瞬間、ピキィッと体が固まった。


私、な、何されてた……!?


抱き締められて…?キ、キス…?


そしてそれを……佐山君に、見られた……。


これは、幻じゃなく、現実で…。

現実で。



「ふ…ふ…」

恥ずかしいどころの話じゃない。


小さな声を上げる私に、久世玲人が耳元で「ふ?」と聞き返してきた。




「ふぎゃああぁぁぁあっっ!!!!」


おそらく、今までの人生の中で1番の大絶叫だっただろう。


「もっと色気がある声を出せ」

そんな久世玲人の声が遠くの方で聞こえたところで、私の意識はプツリと途絶えた。

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