いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]
な、なんてこと言うのっ…!!

ふざけた調子で言う健司にさらに焦っていると、部屋の扉が少し開き、健司がひょこっと顔を覗かせた。

「何してんの?早く入ってきなよ」


……っ!!

そ、そんな簡単にっ…!!

まだ玄関から動けずにいる私に、健司が早く早くと手を招く。


「おい、誰連れて来た。勝手なことするな」

中から機嫌が悪そうな久世玲人の低い声も聞こえ、ますます動けない。


……逃げ出したい。やっぱり、……ムリ!!

極度の緊張から逃げたくなり、回れ右をして玄関の扉に手をかけたところで、「あっ!」という声が聞こえ、健司が慌てた様子でやってきた。

逃げようとする私の腕をグッと掴む。


「逃げるな!」

「ままま待って…やっぱりムリだよっ…」

ヒソヒソと小声で話していると、このおかしな様子に気付いた久世玲人が部屋から出てきた。


「おい健司、何やって―――…」


眉を寄せながらこちらに顔向けた久世玲人が、私を捉えその足を止めた。

突然視界に入った私の姿に、大きく目を見開いている。



「―――菜都…?」


確認するように呟いた久世玲人の言葉に、健司が反応した。


「そ。なっちゃんだよ。連れて来ちゃった」

しかし、おどけた調子で言う健司の言葉には何も答えない。


久世玲人は、切れ長のその瞳を揺らし、ただ真っ直ぐ私を見つめていた。


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