先生、男と女になれません。 -オトナの恋事情ー
下僕の部屋でシャワーを浴びた事に対するお礼のような意味で、今から朝食を作ってくれようというのだろう。


リビングへ差し込む朝の眩しい光の中、その後姿に魅了されて見詰めたまま。


あの黒いパンツの中へ隠されたふくらはぎ、白いシャツの中身の曲線を描く背筋と裸の肩。


僕、いやどんな男でも背後から襲い掛かりたくなる要素は満載、だけれど襲ったが最後、僕は半殺し以上の目に遭うだろう。


「出来たぞ、紅茶を淹れろ」
「はいっ! 」


朝から感じた欲望を抑え込み、テーブルの上で紅茶の準備を始める。


「目玉焼きは半熟がいいな」


そんな僕の側をすり抜けるように宮澤さんがお皿をテーブルの上へ乗せた瞬間、フワッと漂う石鹸の香り。


チラッと視線を顔へ走らせれば、まだ少し赤みが残る頬。


ダメだ、絶対に手を出したら……。


殺される!

< 82 / 183 >

この作品をシェア

pagetop