大好き‥だよ。
朝から俊チャンと話が出来たのは嬉しかったけど、やっぱり恥ずかしいな。だって‥ね?

一人でニヤニヤしていた。
こんな変な顔、誰にも見られていないといいけど。

俊チャンの背中を見ながら、あの日の事を思い出していた。あの日は‥


休日で外の天気も良かったので、久しぶりに自転車に乗って走っていた。

途中、知らないおじいちゃんとおばあちゃんが仲良く手を繋いで歩いているのを見て、何だか私の方が嬉しい気持ちになった。はぐれないように、しっかりと繋がれた二つの手は、二人の恋愛を物語っていたからだ。

元気が出てきた私は、その先は立ち漕ぎにかえてひたすらペダルを漕ぎ続けた。


暫く走ると信号に引っかかった。
歩行者用のボタンを押して、信号が変わるのを待っていると、知らないおばちゃんが私の横で同じように信号が変わるのを待っていた。なかなか変わらない信号に待ちくたびれたおばちゃんは、暇つぶしにと私に声をかけてきた。

始めは、「まぁ」とか「そうですね」と曖昧に返事をしていた私だったけど、次の言葉に過剰に反応してしまった。

「青春」

青春って言葉をお母さんに昔聞いたことがあった。その時は、夢や希望に満ちた若い時期を指すのよ。と教えられた。でも、柳先生は違う説明をしてくれた。

青春は、きらきら輝いているもので決して目で見ることは出来ない。だから捕まえることも出来ない。きらきら輝いているものを見たい、捕まえたいと思い、その為に一生懸命頑張ることが青春だと。だから、決して若い頃だけを指すのではないんだよ、と。

それを聞いた時、凄くわくわくした。
私も早く「青春」を見つけたいってそう思った。だから、今知らないおばちゃんが「青春」と言う言葉を出したとき、目を輝かせて振り向いた。

何処に青春があるんだろうと。

辺りを見渡していると、いつの間にか知らないおばちゃんは信号機を渡りきって、ずっとずっと向こうに行ってしまった。

自転車で追いかけて話の続きを聞こうと思ったけど、その場に思いとどまった。やっぱり自分で答えを見つけたかったから。優しい表情で私に手を振っていたので、私もその気持ちに答えた。
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